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斬り裂かれたその体は花に似た。
体中に伝う鮮血は枝垂れた桜。纏う黄土の着物は散らばる土。
それを背負う君は「屍に似た。




「……」

勝ち目がないことを一角はいつ気付いただろうか。最初に太刀を受けた瞬間辺りの枯れた木が、土が飛び散ったときか。 それとも最初に傷を負わせ、凶悪な顔がにやりと笑ったときか。
瞬間、霊圧が跳ね上がって笑い声と共に一角の胸が斬りつけられる。 びりびりと響く霊圧と声に、離れている僕まで体が震えそうになる。まるで、目の前に切っ先を突きつけられているように感じ、汗が噴き出す。 風もないのに葉がなびき、生きた木さえが折れそうなほどにしなる。

あの一角が、数えられるほどしか傷を負わすことなく、地に。

「…終わりか」
「ぐっ…」

倒れこむ姿が一秒をいくつにも割ったような速度で僕の瞳に映る。一瞬一瞬が花に似て血を啜った桜の様だった。




「……あ…」

今のは、いつの記憶だったろう。もう何十年前の記憶か思い出せない。けれどあの姿を忘れることはない。 断片的な記憶になることもなく君の姿、君の声、どう攻撃を仕掛け、受けたか、すべて覚えている。
膝の上で寝息を立てる一角の着物がはだけて大きな傷が覗く。こんなに平穏で、優しい風がそよぐのに涙が出そうになる。 戦いを第一とするあの人を追う一角には口が裂けても言える事ではないけれど、いつまでも平和で、何も起きなければ良いのにと願っている。
目を瞑ったら、涙が溢れてしまった。

「ごめんね」

呟いて、そっと一角の胸の傷を撫でた。

叶うのならば、ずっと蕾のままで。










三十七巻の弓親の詩。やっぱり、一番美しいのは一角だと思っていると、思う。
唯一、咲いて欲しいと願わない花。

2008.5.16